AV業界と芸能界の壁は思っていたより厚かった

一度アダルト業界に入った女の子は芸能界に行きにくい

ところで無審査ビデオは修整の薄さにより当局からわいせつ物の烙印を押される宿命にあったが、同じ時期、ビデ倫審査を受けたモザイクの厚いビデオの一部も警察の厳しいマークを受けねばならなかった。敬言察側は村西とおる作品に代表される本番AVの増殖を黙視するべきではないと考えていたようだ。87年9月、警視庁少年二課はアダルトビデオにモデルを供給していたプロダクション3社を職業安定法違反容疑で摘発する。新聞発表では3社は労働省(当時)認可のない「もぐりプロダクション」とされ、モデルとしてスカウトした少女の出演料を悪質にピンハネし、時に洞喝して仕事をさせたなどと書かれているが、司法上の実質的争点は別のところにあった。

当時、この事件をリポートした奥出哲雄は以下のように報告している。三社のモデルプロは職業安定法違反の容疑で取調べを受けている。なかんずく、その第63条の罰則規定が争点と言えよう。(略)〈公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で、職業紹介、労働者の募集若しくは労働者の供給を行った者又はこれらに従事したもの>1は罰則を適用されるという一項である。

同条文にある『有害な業務』は、今回の場合、アダルトビデオの出演が該当し、さらにその有害の根拠が本番撮影ということになっている。つまり、分かり易く言えば、モデルプロが所属のビデオギャルたちを本番のあるアダルトビデオに供給することは同条文に触れ、違法行為と見なされるというものだ。すると、現在の業界の慣例をもってすれば、本番もののアダルトは作れないということになってしまうのである。


鐸々たる美女軍団を擁し、豊田薫、伊勢鱗太朗、小路谷秀樹、清水大敬ら有名監督を専属として膨大な本番ビデオを量産した同社は、90年には傘下に収める5つのレーベルをあわせ1ヶ月に30本近い新作をリリースしAV市場を独占する勢いをみせた。また91年以降の急失速、ドラマチックな倒産への過程もAV史を語るうえで欠かせないエピソードである。

しかしダイヤモンド映像設立直後については、多くの読者の記憶は曖昧だろうと思われる。どんなモデルが起用されたのか、どのような話題作が発売されたのか、講がかかったようにおぼろげで、実像が見えてこない。その理由は簡単だ。ダイヤモンド映像設立からひと月を待たずに、村西は製作の最前線から消えてしまうからだ。

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